子どもたちが選ぶフランスの文学賞であるタムタム賞の候補作品。グランプリなるか?
子どもたちをむさぼり食う世にもおそろしいモンスター「ヤーク」には一つだけ弱点がある。それは、悪い子を食うとアレルギー反応が起きて下痢をするということ。ヤークは良い子を求めて夜な夜な世界を飛び回る。しかし、最近はなかなか良い子がいない。ヤークは良い子リストを求めてサンタクロースの家に、白くまに化けて忍び込むが…。
【訳者からみたセールスポイント】
・著者がテレビ漫画のシリーズものを手がけているだけあって、子どもが場面を想像しやすい。1章1章の分量が適当な長さであり、内容がつづきものとして次回を期待させる内容となっているので、音読や朝読にぴったり!
・子どもたちもよく耳にする現代用語、例えば絶滅危惧種、コレステロール、失業、予防接種など少し難しく思われる言葉が、物語の中でユーモアを交え自然に理解できるよう使用されている。名作絵本にはない現代性が感じられ、同時代的な感覚で読み進めることができる。
・低学年の子どもには、下痢やおならといった子どもが大好きなスカトロジックな描写が受ける。善悪がはっきりしたわかりやすい物語を好む中・高学年の子どもには、本書の中で、悪い子が食べられてしまったり、非常に純真無垢な子どもたちは食べられなかったりする勧善懲悪的な要素が受けるはず。
・子どもが純真な善い存在という一面的な見方にとどまっておらず、多様な現実を描いた物語世界を子供たちはリアル感をもって読むことができ、その結果、子どもの多面的思考を育むことに役立つ。
・ホラーではなく、ブラックユーモアの作品であり、批判精神を持つ読者にも受ける。
・子どもに対しては、尊大で失礼な語りの内容は、親の読者の笑いを誘う。現代の子どもや親の生態、現代社会への辛辣な風刺の本。一方で、子ども自身も思い当たるところがあって、笑える内容。
・ギュスターヴ・ドレ風の怖そうなヤークのイラストと彼のモンスターになりきれない性格の対比が鮮やかで楽しい!
以上、結構真面目に考えてみました!